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環境政策の進展と再生利用産業
益々大きくなる静脈産業の役割
M.R.A.特任顧問
財段法人・日本環境衛生センター理事長 奥村 明雄
昨年は、100 年に1 度の世界的な不況の中で明けました。経済は、底打ちをしたといわれておりますが、失業率は高止まりをしており消費も低迷を続けるなど、国内の様相は依然として厳しい状況が続いています。中国をはじめとするアジアの国々の急速な回復に支えられた輸出の改善による回復が進んでいるものの、株価も世界の回復傾向に遅れるなど依然として重苦しい状況が続いており、一部では二番底の懸念もささやかれています。こうした中で明けた寅年の今年は、本格的な景気回復の年であって欲しいというのが皆さんの気持ちではないかと思います。
昨年秋には政権交代があり、民主党政権の下で改革の動きも進んでいます。環境面では、特にそうした雰囲気が強く感ぜられます。自民党政権においても、環境政策の推進をきっかけとして新しい産業を創出し、これを不況克服の柱にしようとするグリーン・ニューディール政策が大きく取り上げられました。民主党政権においても環境、医療、農業等を柱とする経済成長を目指すとしており、このような流れは加速こそすれ停滞することはないと見られています。
環境政策を拡充強化する新政権
鳩山新政権は、発足早々、CO2の1990 年比25%削減を打ち出し、国連総会でもこのことをアピールしました。その後のCOP15 の会議では各国の思惑の中で、わが国は世界をリードすることはできませんでしたが、途上国支援の積極化を謳った鳩山イニシアティブと合わせ、長期的に見て今後の流れを作ったと言ってもいいのではないかと思います。
新政権の下でも、環境政策は引続き拡充強化されると思われますし、補助金やエコポイントの導入などの政策が継続されることにより、従来は、経済ベースに乗らなかった様々の事業が事業化される可能性が生まれてくるものと考えます。
新エネルギーの開発は、国の安全保障の面からも重要であり、例えば住宅やビルの熱効率の改善や小規模水力発電の促進であるとか、温泉熱の有効利用であるとか、従来は取り上げられなかったような、新しい施策が取り上げられてくるのではないかと思います。
東アジアとの連携が重要
もう一つ新政権で注目されるのが、「東アジア共同体」の提唱です。わが国は、既に超高齢社会になってきており、これからは人口が減少していく段階に入っています。このような状況では、経済成長を達成していくためには生産性を思い切ってあげていく、付加価値の高い、どちらかといえばサービス産業を発展させていく、そのような方向がとられなければならないと思います。
それだけではなく、急速に経済発展を遂げつつある中国、それに続くインド、ベトナム等アジア地域が世界の成長センターとなっているのが目に付きますが、わが国は、まさにそこに隣接しているという地の利を得ているわけで、わが国もこれらの国々との垣根を低くし、ともに発展していく方策を講じなければならないと思います。
わが国は、これまで環境面では、これまでの経験から技術的にも進んだ位置にあり、アジア地域に大いに貢献できる地位にあると思います。このような流れの中で、従来型のものづくり企業よりは、環境を前面に出した企業やいわゆる静脈産業の進展が大いに期待されるのではないかと思います。
3R 事業は日本の救世主となりうる
廃棄物の面では、わが国は焼却処理や埋め立て処分から、リサイクル、リデュース、リユースを目指す3Rの方向に大きく舵を切り替えています。経済的にはマイナスの方向であった廃棄物処理は、むしろ無から有を生み出す極めて付加価値の高い産業に変わっていく可能性を秘めているといっても良いと思います。その中でも特筆すべきなのは、廃棄物発電とレアメタルの再利用であろうかと思います。これらの事業は、資源に乏しいわが国にとって、まさに救世主となる可能性を秘めた事業といって良いかと思います。
また、これまで3Rといえばリサイクル・リデュースが中心であり、なかなか進んでいないのがリユースでありました。環境政策に光が当たる中で、リユースにも関心が高まっており、環境省でもそのあり方について研究を進めています。そもそも大量生産、大量消費、大量廃棄が進んだことには、修理やメンテナンスなどの専門家の減少、取り替え部品が供給されないこと等があり、結局は買い替えたほうがコスト安であった事が大きいわけですが、そうした状況をリユースに巻き戻していくためには、これを可能にする社会システムの再構築と安定した需要の確保、低コスト化などが欠かせないと思います。このため、公的関与や公的支援により、こうした活動を経済ベースに乗せるような政策が行なわれなければならないと思います。
今後、こうした機運が生まれていけば、皆さんの取り組んでおられる資源の再生利用は、これまで以上に日の当たる世界に出て行くことになると思います。さらに、それを促進するための政策展開を進めるべく、関係者がもっと声を挙げていく状況になってきているように思います。皆さんが自ら取り組んでいる事業に自信を持ち、自らの役割と社会的効果を訴え、積極的な事業展開を図っていくことが重要で、そして、そのことを可能とする流れが生まれつつあるように思います。
ますます重要になる静脈産業
今ひとつ大事なことがあります。廃棄物を含む資源は、アジア地域では国境を越えて大きく動いています。このことは、皆さんが既に実感されているところであり、年々大きくなっていることは政策当局の関心を高めているゆえんであります。3R政策は、一国だけでなく、アジア地域で共通な認識の下、ともに手を携えつつ行なわれなければならないということで、昨年秋には、環境省の主導の下で「アジア3Rフォーラム会合」が東京で開催されました。こうした動きは、政府だけでなく、研究者、産業界、実務家を巻き込んで、幅広く展開されなくてはならないと思います。
もともと、廃棄物は有価であるか、無価であるかを基に一定の法規制を行なうために定義された概念でありますが、実際は、時に有価であり時に無価であるものとして移動している資源であります。両者は、一体のものとして認識されなければなりませんし、一体のものとして扱われなければならないと思います。
経済の低迷と社会のグローバル化の中で、これまで無価値とされてきたものが一定の社会的システムを構築することにより、有価値のものとして再生する可能性が強まっています。そして、こうした業務、いわゆる静脈産業に従事する方々の役割が益々大きくなる社会となっていると思います。関係者の皆様のご努力をさらに期待するものであります。
多方面に影響力のある組合へ
組合各社の発展を期していきたい
理事長 花澤 義和
2月に入っても、景気は相変わらず先行きが見えず、中国を筆頭とする諸外国に比べ、わが国一国が取り残されているような状況が続いています。環境分野もそれぞれ経営環境は悪く、厳しい状況です。 今の時代、企業単独では顧客のニーズに応えることが難しく、複数の企業や個人のコラボレーションで需要を創造する「協創」が必要な時代になってきています。そういう意味では、組合(M.R.A.)の存在意義が非常に大きくなってきていると考えます。 組合が今目指しているのは、組織の拡大です。地域的には東北方面の強化をしたいと思います。現在、50 社近くの組合員さんがいますが、これを200 社にまでもって行きたいと考えております。ここまで拡大すれば、いろいろな分野に対して影響力を持つことができます。この目標に対してどう取り組むか――。 組合を発展させるためには、タイヤの業界はもちろんのこと、廃プラスチック業界、OA・携帯端末のリサイクル分野など、ウィングを広げた展開をしていきたいと考えております。廃プラスチックの分野はFRP の需要が増えており、またOA・携帯端末のリサイクルは、都市鉱山の問題も含めて、みなさんご存知ようにレアメタルの回収が今後有望な産業になることは間違いありません。
事業としては、タイヤのワイヤーをインゴットにする研究と技術開発、FRP プラント分野の拡大など、実験を基にした基礎データづくり、工場見学なども実施していきたいと考えます。
また、工場、事務所のゼロエミッションの推進も大きなテーマで、そのためにはエコアクション21 取得のための支援事業にも力を入れたいと思います。このほか、斡旋事業の強化、情報の発信力の強化を図って行く計画です。喫緊の課題は、ホームページのグレードアップで、リンクはもちろん、アクセス数を増やすため、訴求力のあるものにする方針です。
いずれにせよ内需喚起、雇用創出、安心・安全・信頼を図る循環型社会の構築に向け、勇気を持って2010 年の端緒を切り開くとともに、去年よりも今年、今年よりも来年と、組合員の皆さんと共に、力のある組合作りをしていきたいと考えております。
タイヤ販売最悪の状況脱する見込み
不況が続けば輸入、中古の増加も
タイヤ協会が昨年末に「2010 年国内需要見通し」を発表した。リーマンショック以来、低迷していた市販タイヤの市場だが、同需要見通しによると、四輪車用タイヤの市販需要は6043 万本にのぼる見込みで、メーカー出荷ベースで対前年比103%、販売会社販売で同101%と、最悪の状況は脱すると予測している。しかし、改善はするものの、依然として厳しい需要環境は続くと見ており、今後の動向が注視される。
品種別に見ると、乗用車用と小型トラック用が同101%、トラック・バス用は昨年の落ち込みが大きかった反動を織り込んで同103%を見込んでいる。また、夏・冬別では夏タイヤが同100%、冬タイヤが102%を見込んでいたが、このところの大雪でスタッドレスタイヤの売れ行きが伸びており、上方修正される可能性が高い。
電気料金の削減に貢献
電力マネジメントシステム展開
日本テクノ
日本テクノ(本社・東京都)は現在、電力マネジメントシステム「ES システムDNA ERIA」の展開を行っているが、これが産業廃棄物収集運搬、同収集運搬処理事業者などの省電力化、経費節減を実現できるものとして、今注目を集めている。
同システムは、電気の使用状況を監視・分析し、電気の使い過ぎを知らせる節電システム。顧客の電力使用状況などを一括管理し、電気料金の大部分を占める「電気使用量」、「デマンド」のデータを閲覧・分析し、効率的な節電プラン作りをサポート、電気料金削減に貢献しようというものだ。
「デマンド」とは、過去1 年間でみた最大需要電力のことで、電気料金の基礎である基本料金は、このデマンドの値で決まる。そのため、この値が上がらないようにコントロールできれば、基本料金のムダを抑えることが可能になるという システムには、スマートメーターという専用モニターが付いており、デマンド目標値が設定されていて、この値を超えると「注意」「警報」表示などで節約を促す表示がされる。使用電力量をCO2換算で表示すること可能で、目で確認しながら節電活動ができる。また、インターネットを利用して30 分ごと、1 日、1 週間、1 ヶ月間の電力需要量が確認でき、電気料金プランの見直しもできるという。
従って、このシステムを導入すれば、電気使用量とデマンドのダブルで下げることはもちろん、従業員の節電意識の向上に役立つ。加えて、電気設備の安全を守る保安・保証サービスも受けられる。
同社では、規模にもよるが「工場で年間300万円、オフィスで年間130 万円の電気料金が削減できる」としており、M.R.A. の組合員でも複数の企業が導入し、経費削減を果たしているという。
他の分野もそうだが、タイヤ業界もこの不況が今後どう影響してくるかどうかが大きな焦点になってくる。不況が続けば中古タイヤや廉価なアジア製タイヤの販売が増加することが当然予測される。適正価格を維持したいナショナルブランドのタイヤメーカーとしては困るが、回収業者としては、量が増えることは事業維持には不可欠。現在、廃タイヤが不足しており、一部で奪い合いが起きているというのが実情で、今後の動きが注目される。